こんな就業規則には注意!!『3つの危険』
①就業規則の周知があいまい
就業規則の効力は、社員に周知をして初めて有効になります。
作成したからといって、金庫や引き出しにしまいっぱなしでは“無効”です。
周知方法は、以下のいずれかの対策が法律で定められています。
- 職場の見やすい場所に掲示する
- 従業員がいつでも見ることが出来るように備え付けておく
- 印刷して従業員に配布する
- パソコンでいつでも見られるようにしておく
中小企業の場合、2.の備え付けが一般的でしょうから、控え室などに備え付けてあればOKです。しかし、これは最低限。せっかく作成した就業規則ですから、法律で要求されている周知にとどまらず、「社員説明会」を開催し、社員に就業規則をよく理解してもらった上で、3.の印刷配布や4.パソコン閲覧の対策が望ましいでしょう。
社員に常にオープンな周知をすることによって、会社・社員の双方にとって守るべきルールが明確になり、社員が安心して働けることにつながっていくはずです。その状況を作り出す基礎が『就業規則の周知』なのです。
②他社の就業規則をマネして作った
現在の就業規則が、どんな過程で作成されたのかにもよりますが、
- インターネットで見つけた他社のものをダウンロードして適当にアレンジして作った
- 知り合いの社長に頼んで見せてもらい、必要そうな部分だけ変えて作った
このような、『他社の就業規則をマネして』作られた就業規則である場合、とても危険です。
その理由は次の2点。
(1)法律用語の意味が理解されていない
普通、パッと見ただけでは日本語として意味は変わらないように見えても、法律的には全く意味が違ったりします。『所定』と『法定』、『振替』と『代休』、『休日』と『休暇』・・・我々専門家からすれば基本的なことでも、社長がその違いをきちんと理解されているかと言えば、私の経験上、失礼ながらほぼありません。
違いを理解されないまま、記載された内容だけが「独り歩き」してしまえば、社長にそんなつもりはなくても、「記載された内容がすべて」になってしまい、必要以上に会社に不利な条件であっても、社員から主張されたことを認めざるを得なくなります。
(2)自社と他社のサイズが合っていない
自社ではとてもマネできない内容が書かれていたりするのも、とても危険です。マネしようとしている会社の規模は?業種は?社歴は?支店や営業所数は?社風は?・・・などなど。なかなかそこまで自社とピッタリな会社などないのではないでしょうか?まして、マネしようとしている会社が自社よりも規模や支店数などが大きな会社の場合は特に危険です。出来もしない労働時間や休日・休暇、給与等の内容をマネした結果、必要以上に“大判振る舞い”な就業規則になれば、経営が立ち行かなくなることだってあり得ます。
法律的な解釈も含め、自社の規模や実態に本当に合った基準で考え「ここまでは出来る」という線引きが正確に出来ればいいのですが、普通はなかなかできるものではありません。
③就業規則を作成した、または変更したのが5年以上前
令和になってから(2019年以降)の、主な法改正を見てみましょう。
年次有給休暇の5日付与義務化(2019年4月~)
労働時間の上限規制(2019年4月~【中小企業:2020年4月~】)
同一労働同一賃金(2020年4月~【中小企業:2021年4月~】)
数年で様々な法改正が行われていることがお分かりいただけると思います。
就業規則を法改正に沿った内容に変更していくのは、「違反の状態」をさけるためにも、もちろん必要ですし、それ以上に、社員のみなさんが安心して働ける環境を、常に整えていくことの方が大事です。
「5年以上前」というのも、ひとつの目安でしかないです。法改正のサイクルに従ってだけでなく、自社の現状に沿った内容かどうかをチェックして、毎年(毎決算期)変更していくぐらいがベストです。
弊所の顧問先の会社様(建設業・社員数30名規模)では、毎年、就業規則の変更を行い、1年間運用する中で修正が必要な箇所のバージョンアップはもちろん、毎年ひとつずつ、新しい福利厚生制度を制定し、就業規則に記載され続けています。
人事組織コンサルタントとして『ヒト』に関する課題の克服にも尽力。
経営理念の作成・浸透コンサルティングを得意とし、人事評価制度の作成や教育研修講師も含め、企業組織文化の醸成に取り組む。
2022年 電子書籍『一番わかりやすい経営理念と事例解説』出版。