就業規則って何?
就業規則とは、“会社で働くみんなのルールブック”
会社で働くみんなが一定の約束に基づき、組織として力が発揮できるように、「ある言動が良いのか、ダメなのか」を判断する指針が示されたルールブックが、就業規則です。
例えば、野球にもルールがありますよね。
『3球ストライクで1アウト』とか、『打ったら一塁に走る』など、みんなが野球をする上で守るべき約束があります。プロ野球でも、草野球でも、みんながルールを守らなければ、練習にも試合にもなりません。そして、ルールがあるからこそ、アウトかセーフかの判断もできます。
会社でも同じです。『休日は週休2日』とか、『勤務時間は9時から18時まで』など、みんなが働く上でのルールがあります。みんながルールを守らなければ会社はバラバラで、組織と呼べるものではなくなります。
また、“ブック”と表現したのには理由があります。それは、就業規則は“書式で残す”必要があるからです。当たり前と思われるかもしれませんが、はたしてそうでしょうか?
まだ就業規則がない会社や、小さな規模の会社は、口約束で、その場対応だったりしませんか?例えば、残業(時間外労働・深夜労働)や休日出勤(休日労働)、それに伴う残業代(割増賃金)のルールはきちんとありますか?
また、社歴のある会社は「慣例」つまり「暗黙の約束」が、まかり通っていたりしませんか?
例えば、年次有給休暇(有休)の申請方法などは一定の決まりがあるものの、上司の顔色をうかがって「暗黙的に」有休が取得できる雰囲気ではなかったりしませんか?
就業規則は、「〇〇の場合は、こうしましょう」「△△はしてはいけません」「□□の人には、いくら支給する」など、会社側も社員側も、双方が守らなければいけないことについての根拠が明確に記載されていて初めて機能するものです。根拠が記載されず、社員の不安や不満があるようでは、優秀な人材が辞めてしまったり、新入社員を採用してもすぐに辞めてしまったりするかもしれません。まずは、「書式化」。そして、社内の誰もが、その約束を守って運用していく。それが『ルール』であり、就業規則です。みんなが安心して働くことの出来るよう、根拠を形にする=書式化することが大切なのです。
法律では就業規則の作成はどう決められているの?
法律(労働基準法)では、『常時10人以上の従業員を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない』と決められています。
つまり、『正社員だろうと、パート・アルバイトだろうと、10人以上の社員がいれば、就業規則を作って、労働基準監督署という役所に届け出てくださいね』ということです。
さて、10人ってどの単位でカウントするのでしょう?それは、『会社単位ではなく、事業場単位で10人以上かどうか』でカウントします。
では、事業場って?それは、『支社や支店、営業所、工場などの各運営場単位』のことを言います。
ということは、例えば、会社全体で社員数18人の会社で、本社に5人・A支店に6人・B支店に7人という場合であれば、会社単位では10人を超えていても、事業場単位では3つとも10人未満ということになり、法律からすれば、就業規則は作成しなくても問題はありません。
しかし、事業場単位では10人未満だから、就業規則を作成しなくても法律には違反してないとは言っても、社員数にかかわらず、自社に就業規則が必要かどうかは、また別問題です。
ある飲食業のお客様の会社も、会社単位では、20人を超える規模なのですが、支店が5店舗あり、各店は4~5人。ということは、法律的には、就業規則を作成しなくても違反ではないことは、もうお分かりですよね?でも、その会社の社長さんは、「会社全体の就業規則は作ってあるんですが、最近、各店舗の営業時間や休憩時間に差が出てきているんですよ」と、お悩みでした。
ですから、「各店は10人未満なので、法律的には就業規則を作成してなくても問題ありませんが、営業時間等だけでなく、各店ごとに運営の事情が異なってきているのであれば、各店用の就業規則を作成するのもいいですよ」とアドバイスさせて頂きました。
この会社のように、法律的には作成しなくても問題はないとしても、事業場単位では運営上、色々な差異があるので、事業場ごとの就業規則を作成したり、または、会社全体共通の就業規則を作成して、そこに事業場ごとに異なった事情を反映した内容を入れ込んでおく等の対策は有効な方法です。
法律的には、就業規則作成の基準は、10人という人数で区切られていますが、実際は、10人未満であっても、運営に支障をきたさないように判断し、働く側の社員にとっても不安のないように“会社で働くみんなのルールブック”を整備しておくことが大切です。
人事組織コンサルタントとして『ヒト』に関する課題の克服にも尽力。
経営理念の作成・浸透コンサルティングを得意とし、人事評価制度の作成や教育研修講師も含め、企業組織文化の醸成に取り組む。
2022年 電子書籍『一番わかりやすい経営理念と事例解説』出版。