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パワハラ・嫌がらせ相談が最多—中小企業が知るべき対策と対応法

1. パワハラ相談が最多—2024年10月の労働相談集計結果

連合が発表した「なんでも労働相談ダイヤル」2024年10月の集計結果によると、相談件数は1,468件と前年同月比で161件増加しました。その中で「パワハラ・嫌がらせ」が最も多く、全体の18.6%を占めています。これに続くのが「雇用契約・就業規則」(9.1%)や「退職手続」(7.4%)などです。業種別では「医療・福祉」(23.0%)が最多であり、次いで「サービス業」(19.7%)、「製造業」(11.4%)が続きます。

2. パワハラ・嫌がらせの実態とは

中小企業におけるパワハラの問題は、社員間の信頼関係を損ない、業績にも悪影響を及ぼす重大なリスクです。また、相談件数が多い背景には、労働者がパワハラや嫌がらせに対する意識を高め、法的対応を求める傾向が強まっていることが挙げられます。

3. 中小企業が取るべき対策

中小企業が労働相談で挙げられた問題に対応するためには、以下のような具体的な対策が必要です。

◆パワハラ防止措置の導入
中小企業においても2022年4月より改正労働施策総合推進法に基づき、パワハラ防止措置を講じることが義務化されています。防止措置には、相談窓口の設置やガイドラインの策定などが含まれます。

◆就業規則の見直し
雇用契約や就業規則の整備が不十分だと、トラブルの火種になりやすくなります。専門家のアドバイスを受けながら、最新の法令に沿った内容に見直すことが重要です。

◆社員への教育・啓発
社員にパワハラに関する知識を普及させ、問題行動を未然に防ぐ教育を行いましょう。

厚生労働省が定めるパワハラの定義:
①優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③労働者の就業環境が害されるもの
職場で行われる、➀~③の要素全てを満たす行為を指す…まずは、この定義の理解が第一です。

かつ、厚生労働省が示している、以下『パワハラの6つの類型』を理解し、自社の(パワハラがあるまたはあり得る)傾向を把握し、適切な対策を講じることが必要です。
(1)身体的な攻撃【暴行・傷害】
(2)精神的な攻撃【脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言】
(3)人間関係からの切り離し【隔離・仲間外し・無視】
(4)過大な要求【業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害】
(5)過小な要求【業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと】
(6)個の侵害【私的なことに過度に立ち入ること】

4.コメント

社会保険労務士の視点から、今回の相談結果に見る「パワハラ・嫌がらせ」問題についてコメントします。特に中小企業においては、パワハラ問題が放置されることで、重大な経営リスクを招く可能性があります。例えば、社員の士気低下や退職、採用時の評判低下に加え、訴訟や行政指導によるコストも無視できません。また、特に業種別で相談が多かった「医療・福祉」や「サービス業」では、対人関係のトラブルが生じやすく、組織運営への影響が顕著です。
しかし、パワハラ問題を難しくしている一因は、人によって受け止め方や感覚の基準が異なることです。一般的に、上司は『指導』と捉える範囲が広く、部下は『パワハラ』と捉える範囲が広くなります。よって、現場で起き得る個々の事案について、パワハラに該当するか否かの判断をするに当たっては、定義②『業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの』で総合的に考慮するほか、行われたその言動により、労働者が受ける身体的・精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要です。また、行為を受けた側・行為者の双方から丁寧かつ中立の状態で、事実確認を行うことも重要です。

5.実務ワンポイントアドバイス

パワハラ問題を未然に防ぎ、社員が安心して働ける職場環境を構築するための具体策を3つご紹介します。

◆匿名相談窓口の設置
社員が安心して意見や苦情を述べられるよう、社内外に匿名相談窓口を設けましょう。この仕組みにより、問題が小さなうちに発見でき、深刻化する前に対策を取ることが可能です。

◆管理職向け研修の強化
パワハラ問題の多くは管理職の不適切な行動に起因することが多いでしょう。そのため、管理職を対象とした研修を実施し、適切なリーダーシップの取り方や問題行動の抑止策を学ぶ機会を提供しましょう。研修内容には、実例を基にしたグループディスカッションを含めると効果的です。

◆経営理念の浸透
社員が企業理念を共有し、理解することで、職場内での価値観の統一が図れます。これにより、自然とパワハラや嫌がらせが減少する職場文化を醸成できます。具体的には、朝礼や社内報を活用して、理念を日々伝える工夫を行うことが有効です。

 

問題発生後の対応に時間やコストを費やすよりも、これらの対策を後回しにせず、即時実施し、未然防止への投資を検討してください。

 

 

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