退職代行サービスの利用増加と中小企業の対応策とは?
1. 退職代行サービスの利用状況は?
近年、退職代行サービスの利用が急速に拡大しています。株式会社マイナビが実施した調査によれば、直近1年間に転職した人の16.6%が退職代行を利用しているとのことです。特に「営業」や「クリエイター・エンジニア」などの職種で利用率が高い結果が出ており、年代別では20代が最も利用率が高いです。
私の顧問先企業でも、ここ2年くらいで、「退職代行サービス会社からいきなり連絡があったけど、どうすればいい?」という連絡をもらうようになり、利用が進んでいる実感があります。
2. 退職代行が選ばれる理由
退職代行サービスが選ばれる最大の理由は、「退職の引き留めを避けたい」という点です。約4割の人が「引き留められた(引き留められそうだ)から」と回答しており、次に多い理由としては「退職を言い出せる環境でないから」「退職を伝えた後にトラブルが発生しそうだから」という声が多くあります。この背景には、企業側と社員側のコミュニケーション不足が影響していると考えられます。
3. 退職代行利用の今後の展望
今後も退職代行サービスの利用は増加が見込まれています。調査では、約4社に1社が退職代行を利用して退職した社員がいると回答しています。さらに、退職代行を一度利用した社員の74.2%が「今後も利用したい」と考えていることから、この傾向は今後も続くと予想されます。
4. 専門家としてのコメント
退職代行サービスの利用が増加している現状では、中小企業にとってもその影響を無視することはできません。特に中小企業では、個々の社員が企業の業績に与える影響が大きいため、突然の退職やそれに伴うトラブルは避けたいところです。退職代行が利用される背景には、社員が直接退職を申し出にくい環境が存在していることが多いです。このような事態を防ぐためには、社員とのコミュニケーション環境づくりが欠かせません。
例えば、定期的な面談を通じて、社員のキャリアプランや仕事に対する不満を把握することが有効です。また、社員が会社とオープンにコミュニケーションを取れるようにするための風土改革も重要です。中小企業では特に、社員が「会社に迷惑をかけたくない」という心理から、辞めにくいと感じるケースが多いため、そのような心理的負担を軽減するための体制整備が求められます。これにより、退職代行サービスに頼らずともスムーズに退職の意思を表明でき、企業側としてもトラブルを回避できるでしょう。長期的には、社員と企業の間に信頼関係を構築することが、企業の持続的な成長につながります。
5. 実務ワンポイントアドバイス:退職時のリスク管理
就業規則や各種規程も含め、退職(または退職について悩んでいる)の申し出や相談などのプロセスを明確にし、社員が適切に申し出でき、方向性がどうなろうとも、不安が解消できる具体的な手順を示すことが、トラブルを防ぐために必要なポイントです。
人事組織コンサルタントとして『ヒト』に関する課題の克服にも尽力。
経営理念の作成・浸透コンサルティングを得意とし、人事評価制度の作成や教育研修講師も含め、企業組織文化の醸成に取り組む。
2022年 電子書籍『一番わかりやすい経営理念と事例解説』出版。