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雇用契約書がないまま雇用していませんか?リスクと対策を解説!

社員を雇用する際、労働条件を明確にするために「雇用契約書※」を交わすことが重要です。しかし、意外とまだまだ中小企業では、雇用契約書を作成していないことがあります。今回は、「雇用契約書がない」ことのリスクとその対策についてお伝えします。

※「雇用契約書」と「労働条件通知書」の違いは以下のトピックスをご覧ください。今回は、便宜上、「雇用契約書」という名称で統一します。https://www.misono-suzuka.jp/information/post1264/

 

雇用契約書がないことで生じるリスク

雇用契約書がない場合、社員と企業の間で労働条件に関するトラブルが発生するリスクが大幅に高まります。例えば、給与の支払日や残業時間に関する労使双方の認識の違いが原因でトラブルへ、また訴訟にまで発展することもあります。また、解雇などの処分の際に不当処分とみなされる可能性も高まります。

労働契約法と雇用契約書の重要性

労働法では、社員との労働条件を明示することが求められています。雇用契約書がない場合、口頭でのやりとりだけでは法的に証明することが難しく、企業側に不利な状況を招く可能性があります。特に解雇などの処分や労働条件の変更時に、企業側の言い分が通らなくなるリスクが高まります。

実際に起きた裁判事例から学ぶ

ある名古屋高等裁判所での判決では、雇用契約書を作成していなかったために、解雇の正当性をめぐってトラブルが生じ、最終的に企業側が敗訴する結果となりました。このケースを通じて、雇用契約書がないことが企業にどれほどのリスクをもたらすかを具体的に見ていきましょう。 

事案の概要

この事例の当事者は、X1とX2という社員と、A社という企業です。X1は平成2931日、X2は同年314日にA社との労働契約を開始しました。しかし、A社はこれらの社員との間で、労働条件を書面で交わしておらず、雇用契約書が存在しない状態で労働が開始されていました。さらに、試用期間の設定や、その終了時期についても口頭での説明しかなされておらず、書面での記録が全く残されていない状況でした。 

解雇を巡る争い

その後、A社はX1に対して平成29630日をもって解雇を通告しました。解雇理由としてA社は、X1が社内の体制を批判し、他の社員にも悪影響を与えたことを挙げました。しかし、この解雇について、X1は不当であると主張し、A社を相手取って裁判を起こしました。一方、A社は、X1が試用期間中であり、試用期間中の解雇であるため通常の解雇よりも条件が緩和されるべきだと主張しましたが、これも口頭での説明のみで、試用期間について書面に記録されていませんでした。 

判決の内容

名古屋高裁では、X1とX2の労働契約において、試用期間や労働条件が書面で明示されていない点を重視しました。裁判所は、A社が書面を交わしていないことを問題視し、労働契約の内容が不明瞭なままであったと判断しました。さらに、A社がX1を解雇した理由についても、具体的な証拠が十分ではないとされました。A社は、X1の勤務態度や社内批判を解雇理由として挙げていましたが、それに対する具体的な注意や指導がなされていなかったため、解雇の正当性が認められなかったのです。 

試用期間と解雇の有効性

裁判所は、試用期間中であったとしても、企業が解雇を行う際には客観的で合理的な理由が必要であり、社会通念上相当とされる基準を満たす必要があると指摘しました。この事例では、A社が試用期間中の解雇を主張したものの、書面での記録がなかったため、試用期間の設定があったかどうかさえも曖昧でした。そのため、裁判所はA社の解雇主張を退け、X1の主張を認める形となりました。

雇用契約書を整備することで企業が得られるメリット

雇用契約書を整備することで、企業は以下のメリットを得ることができます。

◆労働条件の透明化:社員との認識のズレを防ぎ、トラブルを未然に防止できます。
◆企業防衛のための証拠:労働条件が書面で残るため、トラブルが発生した際に法的に有利な証拠となります。

雇用契約書がないまま社員を雇用している企業は、リスクを抱えながら運営していると言えます。早急に雇用契約書を整備し、労働条件を明確にすることが、企業健全な運営の第一歩です。

実務ワンポイントアドバイス

雇用契約書を作成する際には、就業規則と整合性を持たせることが大切です。特に、中小企業では、書類の整備が後回しにされることが多いですが、就業規則と雇用契約書が一致していないと、労働条件を巡るトラブルが発生しやすくなります。定期的に就業規則などの社内規則と雇用契約書の内容を見直し、適切に更新しましょう。

 

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