就業規則の周知方法
就業規則の周知方法。案外、どうすればいいか質問されることも多いので、まとめておきます。
その会社の規模、業種、社員の属性(例えば、現場作業員かオフィスワーカーかなど)によっても適切な方法が異なってきます。典型的な例から応用的な例まで、周知方法を挙げてみましょう。
ちなみに、労働基準法では、以下のように定められています。
就業規則は、各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって労働者に周知しなければならない。
① 常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける
② 書面で労働者に交付する
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する
典型的な周知方法
掲示
労働基準法に基づき、事業場内の目立つ場所に就業規則を掲示する方法です。中小企業では、もっとも一般的と言っても過言ではないでしょう。休憩室や食堂、会議室などの社員の誰もが自由に出入りできる場所に、就業規則の副本(コピー)をファイリングして置いておくという方法ですね。
配布
社員に対して紙媒体の文書で直接配布する方法です。100%モレなく周知できるので、その点では最も法律が求めている方法かもしれませんね。
掲示・配布のメリット・デメリット
メリット: 法律で認められた基本的な方法であり、労使ともに、老若男女問わず、単純明快である。
デメリット:更新があった場合の再掲示・再配布が必要で、定期的な管理が必要。
電子メール
社員に対して電子メールで就業規則を送信する方法です。読了(既読)を確認するために返信を求めることも含んでもいいでしょうね。
社内イントラネット
社内など限られた範囲内で利用可能なネットワーク環境であり、ログイン・アクセスできるのも権限のある社員のみに限られる「内部ネットワーク」上に就業規則をアップロードし、アクセスできるようにする方法です。
50名前後の規模になると導入している会社があります。
電子メール・社内イントラネットのメリット・デメリット
メリット: 時代に沿った方法であり、ペーパーレス化により環境にも優しく、更新時の管理も容易である。
デメリット: ITリテラシー(社員側のITに対する知識や慣れなど)が必要で、特に年配層に配慮が必要。また、セキュリティ対策が必須。
応用的な周知方法
動画コンテンツ
就業規則の要点を分かりやすく解説した動画を作成し、社内イントラネット等で共有する方法です。動画は文字の5000倍情報を伝えられ、1分間の動画から伝わる情報量は文字に換算すると180万語にもなると言われます。就業規則の周知に限った話ではないですが、社員にきちんと伝えるという側面からすれば、とても効果的ですね。特に就業規則は、文字だけだと法律的な用語の言い回しも多く、「読みにくさ」は小説や雑誌の比ではないですし。
動画コンテンツのメリット・デメリット
メリット: 圧倒的に理解がしやすく、社員の関心を引きやすい。
デメリット: 制作に時間とコストがかかる。内容の定期的な更新が必要。
部門別・職種別セミナー
部門や職種の特性に応じて、就業規則の関連部分をピックアップして説明するセミナーを実施する方法です。社内には、製造部や総務課といった部門があり、課長や係長といった役職もある。営業職から事務職まで職種も様々。こういった状況は、中小企業でも普通の光景です。それぞれに必要とされる情報を的確に伝えることができるかは大切なポイントです。社員説明会といった形で、全社員対象に伝えることも重要ですが、よりピンポイントに対応していくことも会社の対応として大切ですね。
部門別・職種別セミナーのメリット・デメリット
メリット: 部門や職種の特性に応じた内容を集中的に説明でき、理解しやすい。
デメリット: 実施に時間もかかり、スケジュール調整も必要。
ご紹介した各方法には、それぞれメリット・デメリットがあり、会社の規模や状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。また、もちろん複数の方法を組み合わせて実施することで周知の効果を高めることが期待されます。
(※「応用的な周知方法」の動画解説者やセミナー担当者として、ご要望がありましたら、対応させていただきますので、ご相談いただければ幸いです。)
人事組織コンサルタントとして『ヒト』に関する課題の克服にも尽力。
経営理念の作成・浸透コンサルティングを得意とし、人事評価制度の作成や教育研修講師も含め、企業組織文化の醸成に取り組む。
2022年 電子書籍『一番わかりやすい経営理念と事例解説』出版。