経営理念作成
keieirinen-sakutei「経営者の思いをしっかり反映できた経営理念ができた。その後の研修も、社員の意識が変わったことは明らかだったし、自主性は向上したね」
製造業、従業員数9名
―2014年、弊所主催の理念策定・浸透をテーマにしたセミナーに参加していただき、その後、理念策定・浸透のコンサルティングをお手伝いさせていただいた会社―
当時は、大手企業の下請がメイン。来る日も来る日も大手の急な発注や納品の締め切りに振り回され、社長も従業員も疲弊していた。
そんな状況を打破すべく、自社で製品を企画し、製造、販売する方向へとシフトしていく過渡期だった。なんとか自社製品で活路を見出していこうとする社内の雰囲気も相まって、社長は今までなかった経営理念を作ることを決心する。
それを後押ししたのは、冒頭のセミナーに参加した労務管理担当の社長の妻だった。
セミナーを聴いて感じ得た自社の明るい未来図。それを現実のものにしようと、加藤を呼び寄せ、早速、経営理念策定に向けた打合せが始まった。
加藤は驚いた。2人の過去には、思いもよらぬ苦労と努力があり、まさに二人三脚でここまで経営を軌道に乗せてきたのだった。
ただ、まだ今は、自社で製品を企画、製造、販売する方向へとシフトしたばかりで経営的には不安定。
しかしながら、2人には、その自社製品にかける揺るぎない熱い思いやこだわりがあった。それをひとつひとつ丁寧にひも解きながら言葉を紡ぎ出し、2人が納得のいく経営理念が完成した。ヒアリングをかさねること計27時間、延べ7か月にもおよんだ。
完成した時に社長と交わした会話。今でも、加藤は忘れられない。
「僕らと加藤さんは、まったく違うルートで登山をしてきた。平坦な道もあれば、急こう配の道もあった。けど、何とか登って登って、最終的に、お互いが山の頂上で出会い、『よっしゃー!』ってハイタッチしたみたいな感じですね」
そう、まさに経営理念の策定を例えるなら、この登山の例えがふさわしい。
経営者は、自らの思いや経験、未来図や社員への期待、地域社会への貢献など様々な胸の内を吐露する。それは、ある意味、玉石混交で構わない。今までの色々な思いが一気に爆発するように出てくるからだ。
一方、コンサルタントは、それを受け止めて “石の中から玉を探す” ごとく、膨大な言葉の中から、大事なキーワードを選別し、それをまた深堀りしていく。
両者のやっていることはまるで異なるのだが、目指している目的は、ただひとつ。「自社に最適な経営理念を作ること」。経営理念の完成という“頂上”でそれまでの紆余曲折がひとつになった時の達成感、感動すら覚える瞬間なのだ。
経営理念の完成後、更に社長は浸透策へと歩を進めた。加藤と相談の結果、社内研修という形で社員に経営理念を理解してもらい、その思いを浸透させていこうということになった。
研修の方法としては、こうだ。
まずは、経営理念の一言一句に込められた思いを社員に説明する。どうしてこの言葉が使われているのか?どうしてAという表現ではなく、Bという表現を用いているのか?社員にはどう理解して実践していってもらいたいのか?等などを明確に。
その後、社員には「経営理念について、どう理解し、どんな行動をし、どんな効果・成果があったか」を毎月90分の研修で発表し、個々の経験を全員で共有し、価値観のベクトルを合わせていく。こういった研修内容に不慣れな社員は当然いる。しかし、まずは細かいことは気にせずに、個々の考え方や実践したことを尊重して共有することが大事。
かく言う、この会社の社員もそうだった。最初は、ぎこちなく、自信なさげで発表していたが、回を重ねるごとに、発表も高度化した。パワーポイントで資料を作成し、プロジェクターを準備してプレゼン風に行う者も現れだしたのだ。
半年の研修期間で、社員の理解・実践度合を充分把握できた社長。経営理念の策定と、理解・浸透。ひとまずの大きな節目を無事に迎えることができ、温めていた次なる自社企画製品の試作へと動き出した。
今まではその大部分を社長自身が取り仕切らなければならなかったが、経営理念の効果もあり、社員が個々の責任において積極的に行動してくれることを肌身で感じていた。